インプラントと周辺天然歯の位置関係の変化

 インプラント支持の前歯や臼歯の隣在歯が健全な歯根膜を有する単独天然歯(歯根)である場合、インプラント上部の修復物との位置関係には変化が起こります。 たとえばセット時に隙間がなかった臼歯や切端の長さがバランスよく揃っていた切歯が、時間ともに隙間が増え食片が入りやすくなったり、切歯の長さが不自然となる傾向が見られます。  インプラント体は骨性癒着(骨統合;osseointegration)して移動はないものの、(歯列構成の生理的なメカニズムで)天然歯は前方に移動しますし、前歯なら対合歯に咬みこむように挺出移動する働きがあります。 上顎前歯が下顎前歯に対し滑りながら接触するようなかみ合わせであると、この挺出力を下顎前歯が受け止められなかったり、セラミック冠が対合下顎前歯を摩耗させながら挺出する場合もあります。  これらのメカニズムは天然歯とインプラントが混在する環境では当たり前のように起こることで、回避するより対応を考慮した設計が大切です。 前方隣在歯がガラス質のセラミック冠では難しいですが、隣接面にコンポジットレジンを接着したりするのも一つの方法です。  またスクリュー固定で簡単に上部構造を外せる場合は前方隣接面の処理のほかにも、上部構造に粗造面を作ってスペースを減らす材料を付与することもあります。 前歯の切端の位置の変化は挺出した部分を調整するのが最も簡単な解決法となります ( 修復済なら!)  臼歯の前方(近心)移動については、上下の臼歯の歯冠咬合面の接触関係が安定していないことも関与しているようで、咬頭と裂溝・窩が緊密に多数の接触点で咬合していれば、歯の側方への移動は抑制されると考えられます。

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臼歯の位置変化とインプラント

 以下は右下第一大臼欠損部に埋入されたインプラント上のクラウンが手前(近心)の第二小臼歯の前方移動によって繊維性の食片が入りやすくなるため、数年ごとに定期的なレジン接着によって対応しているもの。

前歯の位置変化とインプラント

 以下の2ケースは処置完了10年前後で中切歯の天然歯側が挺出し切端の位置が2mm弱不揃いになったもの。 中央の前歯であり差異がわかりやすい。 インプラント支持のセラミック冠は移動しないうえ、隣在中切歯が未処置歯の健全歯の場合は顕著な挺出がすくないことから、これらケースがセラミック冠であることが対合切端をより摩耗させ、その分だけ移動量が増加したことも考慮される。 修復歯冠のため伸びたように見える切端部を丁寧に調整研磨して対応。

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