必要に迫られ前歯の被せもの治療(歯冠修復)をされる場合に、1〜2本の少数の歯を以前より明るめに直したいと希望される方は少なくありません。 しかしながら前歯部位では修復物が周辺歯よりも明度が高いと、かえって新しい歯に作りもの感が生じるようです。 その場では気に入られても自宅に戻られ気持ちが変わることも考慮して、修復物の仮着(仮留め)期間を置いて1週間以上過ぎた後に本セットとするか、はたまた回収してステインという上塗り後に千℃くらいで焼き直す技工作業で色合わせをして、再度色調をトライすることもあります。 一般にセラミックス本体(ボディー)は明るめに仕上げ、ステイニングで明度を落としたり表面模様を付与します。 最初にボディー色が濃く暗色と認められた場合は、ステイニングで明るくしても透明感のないオペーキーな感じとなりますので、自然な感じを求めるなら一からの再生となり歯科技工士の負担は大きくなるからです。 そのため修復歯を明るめに製作する場合は周囲歯にホワイトニング操作を加えることも自然な美しさの追及には大切なTips(コツ/テクニック)と考えます。
以下に健全歯のなかで中切歯1歯のみの修復がおこなわれた典型的な例を表示します。
周囲の歯をホワイトニングしてからセラミック冠の色調を決定
学童時に外傷により失活した変色中切歯の再建治療
先行して変色象牙質の脱色、外側と根管内部にも漂白剤を作用させる
漂白された象牙質
さらに周辺歯もホワイトニング
数回繰り返し明度が高くなった前歯部位
中切歯はファイバーポスト築造後に型取り
両側中切歯と周辺歯にあわせ製作されたジルコニアセラミック冠
周辺歯の明度を上げたうえ装着された修復歯
セラミック冠の色調を明るめに作り周囲の歯を後からホワイトニング
外傷により変色した右側中切歯
前処置を終わり修復物の製作
やや明るめに製作されたジルコニアセラミック冠
新しい修復物(ジルコニアセラミック冠)を仮着
周辺歯をオフィスホワイトニング
ホワイトニング終了時
周辺歯の明度が修復歯に揃った状態