バルブラスト床のように維持力低下のため数年の使用が前提の義歯と違い、通常の精巧な部分床義歯(パーシャルデンチャー)では維持装置(クラスプ等)がかかる残存歯(鉤歯)は天然歯と異なり、複数の鉤歯が義歯の転覆力を防ぎ、適切な維持力の確保および着脱方向、噛みしめ時の義歯の沈み込みを制限するような形状で製作される。 着脱方向が一方向に定まらない複数の鉤歯があると義歯は嵌める時にきつく、嵌ると緩いような状態に陥りやすい。 前方歯群ではメタルクラウンが好まれないため陶材焼き付け金属冠が適用されることが多く、陶材が剥離することを回避するため通常は加工時に金属フレームを露出させる。 ガイドプレーン(着脱方向面)やレストシートといった義歯を受け入れるための鉤歯の形状はサーベーヤーといった器材で着脱方向や維持力の設定をおこなう。 最近のジルコニア冠使用の場合は熱処理以前の素材の設計(CAD)削り出し(CAM)の段階で鉤歯形状を確定するが、複雑な形態となる場合はミリングマシンの性能も影響する。 以下は片側性の義歯に対するジルコニアクラウンによるやりかえと精密義歯の同時製作の一例。 また両側義歯の鉤歯をジルコニアセラミックにて製作し、義歯のクラスプにオペークレジンを接着する加工を紹介する。 樹脂素材のノンクラスプデンチャーの維持力は2~3年でなくなるので、10年以上の使用が前提の精密義歯の維持装置には金属が利用される。
*クラスプへのオペークレジンの接着